What's New

ドライブマイカー

10時半家族皆で出雲のユメタウンに向けて出発。今日は映画を見ます。子供たちはアニメ、私は今話題の「ドライブマイカー」。食事を済ませて、4月から専門学校生になる孫のスーツを買い、いよいよ映画。私のは2時半から3時間の大作です。村上春樹原作西島秀俊主演。村上春樹の作品を読んだことがないのでどんな作品か事前知識は無し。西島(夫)は俳優で演出家、奥さんは脚本家夫婦の物語だが、お互いが協働しながら、奥さんが不倫を重ねることを直視せず夫婦であり続けるというちょっと歪んだ関係。奥さんの不倫も、脚本家としての作業として行われるという事で、夫婦関係はかなり複雑。どんな夫婦でも相手の全てを知ることはあり得ないが、その矛盾が二人の関係に破綻をもたらす直前に奥さんがくも膜下出血で急死。結局現実から目を背けたまま2年が過ぎ、新しく演出する仕事をしている中でそれまで知らなかった奥さんの姿を知ることになり、もっと現実に向かい合うべきだったのではないかと想い悩む。(多分奥さんは、不倫する中で生み出すはずだった作品を、愛する亭主以外では作品に出来ず悩んでいただろうと思われる)演出する舞台の主演俳優(岡田将生)が傷害致死で逮捕されてしまい、自分が主演をやるか、公演を中止するかの選択を迫られる。一度は「自分は主演することは出来ない」と断るのだが、演出することとは違い、「演じることは生身の自分をさらけ出すことになる。自分にはその覚悟がない」と思ったのかもしれない。それでも、もう一度考えてみようと思いなおし、訳ありそうな自分の車の運転手(女性)と一緒に、彼女が子供のころ被災し、お母さんが亡くなった北海道の生家を、広島から二日掛けて長距離運転で尋ねる中で考えようと、二人で出かける。もともと自分で運転する主義だった主人公が、無理やり運転手を雇うようになるのも伏線になっている。何故急に運転手の被災家屋を見に行こうとしたのかは説明がないが、この運転手がもつ得体のしれない雰囲気の中に、何か生身の人間を感じ、それに触れることで、何かを感じ取れると思ったのかもしれない。道中この運転手の複雑な境遇が明かされ、ともに心に傷を持つ二人が瓦礫になった(運転手は子供のころ母親から暴力を受けており、被災した時に救出できたはずなのに見殺しにしたというトラウマを持っている)生家の前で、最後に心を開きお互いの苦しみを理解し合う中で、「もう一度奥さんに会いたい(奥さんの心の中の悩みを共有したい)」と心の底から叫ぶ。(このシーンでひとつ気になるところがある。主人公が運転手に向かって「君は悪くない」と抱きしめるシーンが、映画グッドウィルハンティングのクライマックスシーンで、心療科医ショーンがウィルに向かって「君は悪くない」と言って抱きしめ、心に傷を持つ二人が心を開き合うのだが、セリフもシーンも一緒)最後に自分が主演をする劇中劇(チェーホフ?)で、映画が言わんとするテーマが語られる。「人間は矛盾に満ち、苦しみながらもそれを生き抜き、死後に初めて平安が得られる」(不完全で、苦しくてもそんな自分を生き抜け―ドライブマイカー。最初は自分で運転する主義だった主人公が、無理に運転手を雇うことになる。その優秀な運転手も孤独で心に傷を持っている)という事と理解したが、この作品が今、映画賞を総なめにしそうだとのこと。こんな重いテーマが映画化され、それが評価されるという事は、現代人が抱える苦悩や、不安を見事に表現したことが要因かもしれない。主演の西島、奥さん役の女性、運転手役の女性ともに見ごたえのある演技だった。私の人生と重ね合わせ、「苦しくても逃げるな」という励ましと理解した。人生後何年あるかわからないが、そう長くは残されていない年月を精一杯生き抜いてみようと改めて思う。途中寝落ちするのではないかと思っていたが、3時間があっという間だった。(大した解説ではないがこれから見る人へのネタ晴らしになっていたらすみません。)人生息苦しいと思いながら生きている人におすすめです。